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<居住用財産の譲渡所得の特別控除に関する改正>
2023年6月2日
令和5年度税制改正により、「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特例」の適用期限が4年延長され、令和9年12月31日までとなりました。その他にも適用要件が一部緩和されています。
被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特例とは、相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却した場合、一定の要件に当てはまるときは譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる特例のことです。
今回改正された点は以下の通りです。
改正前
・適用期限…令和5年12月31日
・耐震要件…譲渡日までにその家屋が耐震基準に適合
・敷地のみ譲渡の場合の要件…譲渡日までに家屋を除却
・控除額…3,000万円(相続人が複数名の場合はそれぞれ3,000万円)
改正後
・適用期限…令和9年12月31日
・耐震要件…譲渡日から譲渡年の翌年2月15日までにその家屋が耐震基準に適合
・敷地のみ譲渡の場合の要件…譲渡日から譲渡年の翌年2月15日までに家屋を除却
・控除額…3,000万円(相続人が3人以上いる場合は1人あたり2,000万円)
上記の改正は、令和6年1月1日以後に行う被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡について適用されます。
適用要件は一部緩和されていますが、相続人が3人以上いる場合は控除額が引き下げられています。
仮に、相続人が3人だった場合の控除額は、
令和5年中に譲渡 3,000万円×3人の最大9,000万円の控除
令和6年以降に譲渡 2,000万円×3人の最大6,000万円の控除
となります。
上記のケースに該当される方は、譲渡の時期により控除額が大きく変わりますので注意が必要です。
国税庁HPより
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〈給与の源泉徴収税額の求め方〉
2023年6月2日
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を提出している源泉徴収義務者の源泉徴収した所得税および復興特別所得税の次回の納付期限は令和5年7月10日(月)となります。日頃から源泉徴収は正しく行えているでしょうか。税務調査で指摘を受けた場合は遡って納付する必要があり、場合によっては不納付加算税が課される可能性もあります。今回は給与を支払うときに源泉徴収をする所得税および復興特別所得税の額の求め方について確認してみましょう。
給与を支払うときに源泉徴収する所得税および復興特別所得税の額は、「給与所得の源泉徴収税額(月額表および日額表)」(以下「税額表」といいます。)を使って求めます。
この税額表は、給与の別、「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出の有無および給与の支給方法に応じ、次のように使用します。
①「月額表」を使う場合
「月額表」を使うのは、次のような給与を支払う場合です。
(1)月ごとに支払うもの
(2)半月ごと、10日(旬)ごとに支払うもの
(3)月の整数倍の期間ごとに支払うもの
また、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与については「甲欄」を、その他の人に支払う給与については「乙欄」を使って税額を求めます。
②「日額表」を使う場合
「日額表」を使うのは、次のような給与を支払う場合です。
(1)毎日支払うもの
(2)週ごとに支払うもの
(3)日割で支払うもの
(4)日雇賃金
※(1)~(3)については日雇賃金を除きます。
上記の(1)から(3)に掲げる給与のうち、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与については「甲欄」を、その他の人に支払う給与については「乙欄」を、(4)の日雇賃金については「丙欄」を使って税額を求めます。
日雇賃金とは、日々雇い入れられる人の労働した日または時間によって算定される給与等で、労働した日ごとに支払を受ける(その労働した日以外の日において支払われるものも含みます。)ものをいいます。ただし、1ヶ所の勤務先から継続して2カ月を超えて給与等が支払われた場合には、その2カ月を超える部分の期間について支払われるものは含まれません。
なお、パートやアルバイトに対して日給や時間給で給与を支払う場合は、あらかじめ雇用契約の期間が2カ月以内と決められていれば、「日額表」の「丙欄」を使って税額を求めます。
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〈資格取得費・奨学金等の費用負担の取扱い〉
2023年5月9日
政府がリスキリング(学び直し)の支援に5年で1兆円を投じると表明し、学び直し・資格取得の機運が高まっている中、従業員の資格取得支援のために何ができるでしょうか。人材開発支援助成金といった制度もありますが、ここでは資格取得費・奨学金等の費用負担等に関する課税関係について一部紹介します。
①職務に必要な技術などを習得する費用を支出したとき
役員や使用人に、仕事に関係のある技術や知識を習得させるための費用を支給する場合があります。
この場合には、役員または使用人としての職務に直接必要な技術や知識を習得させ、または免許や資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用または大学等の聴講費用に充てるための費用として適正なものに限り、給与として課税しなくてもよいことになっています。
②学資に充てるための費用を支出したとき
使用人に、学資に充てるための費用を支給する場合があります。
この場合には、支給したこれらの費用が下記の「要件」を満たしていれば、給与として課税しなくてもよいことになっています。
【要件】
1.通常の給与に加算して支給する費用であること。
給与として課税しなくてもよいものは、通常の給与に加算して支給されるものに限られますので、本来支給すべき給与の額を減額した上で、それに相当する額を学資金として支給するものなどは給与として課税されます。
2.次の(1)から(4)までのいずれにも該当しない費用であること。
(法人の場合)
(1)役員の学資に充てるため支給する費用
(2)役員や使用人と特別の関係がある者(注)の学資に充てるため支給する費用
(個人事業者の場合)
(3)事業に従事する個人事業者の親族(個人事業者と生計を一にする親族を除きます。)の学資に充てるため支給する費用
(4)使用人(事業に従事する個人事業者の親族を含みます。)と特別の関係がある者(注)(個人事業者と生計を一にする親族を除きます。)の学資に充てるため支給する費用
ただし、上記(2)、(4)の「特別の関係がある者」が、学資金等を支給する法人または個人事業者の使用人である場合で、かつ、その学資金等の支給がその「特別の関係がある者」のみを対象として支給されるものではない場合には、上記(2)、(4)に該当しないものとして取り扱って差し支えありません。
(注)「特別の関係がある者」とは、次に掲げる者をいいます。
イ 使用人(法人の役員を含みます。以下同じ。)の親族
ロ 使用人と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者およびその者の直系血族
ハ 使用人の直系血族と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情に ある者
ニ イからハまでに掲げる者以外の者で、使用人から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者およびその者の直系血族
ホ イからニまでに掲げる者以外の者で、使用人の直系血族から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者
③従業員に貸与した奨学金の返済を免除した場合の経済的利益
従業員の高度な知識の習得を目的として、会社が指定する資格の取得を希望する従業員(役員を除く。)に対し、専門学校等の授業料等の資格取得に必要な費用に充てるための社内奨学金制度について、専門学校等に会社が授業料等を直接払い込む、奨学金免除を受けた従業員の給与が減額されることがない等、一定の要件を満たした場合、奨学金の返済を免除された従業員が受ける経済的利益は、学資に充てるため給付される金品(所得税法第9条第1項第15号)に該当し、給与所得の非課税として取り扱って差し支えありません。
④独立行政法人日本学生支援機構の企業の奨学金返還支援(代理返還)
令和3年4月1日より独立行政法人日本学生支援機構(以下、「機構」という。)の貸与奨学金(第一種奨学金・第二種奨学金)を受けていた社員に対し、企業が返還額の一部または全部を機構に直接送金することができるようになりました。
この制度を利用する場合の課税等の関係は次となります。
(1)【所得税】非課税となり得る
返還者にとって、企業が直接機構に送金することで自身の通常の給与と返還額が区分され、かつ奨学金の返還であることが明確となるため、その返還額に係る所得税は非課税となり得ます。
※返還者が役員である場合など一定の場合には、所得税の課税対象となることがあります。
(2)【法人税】給与として損金算入できるほか、「賃上げ促進税制」の対象になり得る
企業にとっては、代理返還は使用人の奨学金の返済に充てるための給付にあたるので、給与として損金算入されます。また、「賃上げ促進税制」の対象となる給与等の支給額にも該当することから、一定の要件を満たす場合には、法人税の税額控除の適用を受けることができます。
※賃上げ促進税制の詳細は当コーナー2023年3月2日掲載の〈賃上げ促進税制(令和4年4月1日以降開始の事業年度用)〉をご覧ください。
(3)【社会保険料】原則として、標準報酬月額の算定のもととなる報酬に含めない
奨学金返還支援(代理返還)による返還金は、原則として報酬に含めません。
※ただし、給与規定等により給与に代えて奨学金返還を行う場合には、報酬に含みます。
国税庁HPより
No.2601 職務に必要な技術などを習得する費用を支出したとき|国税庁 (nta.go.jp)
No.2588 学資に充てるための費用を支出したとき|国税庁 (nta.go.jp)
従業員に貸与した奨学金の返済を免除した場合の経済的利益|国税庁 (nta.go.jp)
〔証券投資信託の収益の分配(第11号関係)〕|国税庁 (nta.go.jp)
独立行政法人日本学生支援機構HPより
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<先端設備等導入制度 固定資産税の特例措置>
2023年5月9日
特例措置の概要
・対象者…資本金1億円以下の法人、従業員数1,000人以下の個人事業主等のうち、先端設備等導入計画の認定を受けた者(大企業の子会社等を除く)
・対象設備…認定経営革新等支援機関の認定を受けた投資利益率5%以上の投資計画に記載された1から4の設備
「減価償却資産の種類ごとの要件(最低取得価格)」
1.機械装置(160万円以上)
2.測定工具及び検査工具(30万円以上)
3.器具備品(30万円以上)
4.建物付属設備(60万円以上)
・その他要件
1.生産、販売活動等の用に直接供されるものであること
2.中古資産でないこと
・特例措置
1.固定資産税の課税標準を3年間に限り2分の1に軽減
2.賃上げ方針を計画内に位置付けて従業員に表明した場合は、以下の期間に限り課税標準を3分の1に軽減
令和6年3月31日までに取得した設備…5年間
令和7年3月31日までに取得した設備…4年間
上記特例に関して、4月1日にQ&Aを公表しました。
Q1.設備稼働後、計画した投資利益率を達成できなかった場合、税制措置の取り消し等は行われるのか。
A.税制措置の取り消し等はありません。
Q2.従業員に対して賃上げ方針の表明を行い、雇用に関する事項として賃上げ方針を記載したが、実際に賃上げできなかった場合、税の追納等は発生するのか。
A.計画期間中の経済情勢等により必ずしも想定通りの賃上げに至らないこともあるかと思いますので、それだけを以って税の追納等は発生しません。
その他のQ&Aにつきましては下記をご確認ください。
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〈令和5年度税制改正(中小企業関連)〉
2023年4月4日
令和5年度税制改正に関する「所得税法等の一部を改正する法律案」が令和5年3月28日に国会で可決・成立しました。主なものの概要については当コーナーの2023年1月6日掲載の〈令和5年度与党税制改正大綱が決定〉で紹介していますが、今回は中小企業関連のものをご紹介します。
・中小企業経営強化税制(延長)
中小企業等経営強化法による認定を受けた計画に基づく設備投資について、即時償却(100%)又は税額控除(10%(資本金3,000万円超は7%))のいずれかの適用を認める措置。
・中小企業投資促進税制(延長)
一定の設備投資を行った場合、特別償却(30%)又は税額控除(7%、資本金3,000万円以下の中小企業等に限る)のいずれかの適用を認める措置。
・生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例(創設)
市町村の認定を受けた「先端設備等導入計画」に基づき、年平均5%以上の投資利益率が見込まれる投資計画の対象となる機械装置等を導入した場合に、固定資産税を最大3年間1/2軽減。
(雇用者全体の給与が1.5%以上増加することを従業員に表明した場合は最大5年間、固定資産税を2/3軽減)
・法人税率の軽減(延長)
所得の800万円まで法人税の税率を15%に軽減。
(法人税法において19%に軽減、さらに租特法で15%に軽減)
・中小企業技術基盤強化税制(拡充・延長)
試験研究費の増加割合に応じて、控除率(12~17%)・控除上限(10%)を上乗せする措置を延長するとともに、売上高に占める試験研究費の割合に応じた控除上限の上乗せ(10%)する措置についても延長する。さらに、対象となるサービス開発の定義を拡大。
売上が2%以上減少しているにも関わらず試験研究費を増加させる場合の控除上限の上乗せは廃止。
・中小企業防災・減災投資促進税制(拡充・延長)
認定を受けた事業継続力強化計画に基づき、自然災害に備える中小企業の防災・減災設備投資に、特別償却(18%、令和7年4月1日以降の取得は16%)を認める措置。対象設備に耐震装置を追加。
・地域未来投資促進税制(拡充・延長)
地域活性化に貢献する先進的な事業について、建物・機械等を新設・増設した場合、特別償却又は税額控除を適用。3億円以上の特に高い付加価値を創出し、地域の事業者との取引や新たな雇用の創出等を通じて、より一層地域経済に波及効果を及ぼす事業には、特別償却率・税額控除率を引き上げ。
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<電子帳簿保存法>
2023年4月4日
令和4年1月より施行された改正電子帳簿保存法のうち、電子取引データ保存の猶予期間が令和5年12月31日までとなっています。それ以降は電子取引における電子データの保存が義務化となりますのでご注意ください。
電子データの保存が必要な書類
・電子メールに添付されたPDFの請求書
・通販を使用した際にダウンロードした領収書等
・請求書発行システムを経由してやりとりをした請求書や発注書
・自社が電子メールに添付して送信したPDFの請求書 など
・訂正、削除履歴の確保
・相互関連性の確保
・関係書類等の備付け
・見続可視性の確保
・検索機能の確保
なお、令和5年度税制改正により、電子取引情報保存制度の見直しが行われました。
・相当の理由があると認める場合(事前手続不要)、その電子取引データの出力書面の提示、提出の求め及びその電子取引データのダウンロードの求めに応じることができるようにしておけば、保存要件を不要として電子取引データの保存が可能に
・検索機能の確保の内の検索要件のすべてが不要となる対象者を以下の保存義務者とする
1.基準期間の売上高が5,000万円以下である保存義務者(現行1,000万円以下)
2.取引日ごと等に整理した出力書面を求めに応じて提示、提出できる保存義務者
以上の内容は令和6年1月1日より適用されます。
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<賃上げ促進税制(令和4年4月1日以降開始の事業年度用)>
2023年3月2日
概要
・中小企業向け賃上げ促進税制は、中小企業者が、前年度より給与等を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除ができる制度です。
令和4年度税制改正により、令和4年4月1日以降に開始される事業年度(個人事業主は令和5年分)が対象となります。
適用要件
・通常要件…雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加
→控除対象雇用者給与等支給増加額の15%を法人税額又は所得税額から控除
・上乗せ要件①…雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加
→税額控除率を15%上乗せ
・上乗せ要件②…教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加
→税額控除率を10%上乗せ
令和4年度税制改正による主な変更点
・上乗せ要件を簡素化
・控除率引き上げ(控除率最大40%)
・教育訓練費増加要件に係る明細書の添付義務を保存義務へ変更
・経営力向上要件は廃止
詳しくは、下記リンクの経済産業省発行のご利用ガイドブックをご覧ください。