-
配偶者控除、配偶者特別控除の見直しについて
2018年11月2日
今年も年末調整の時期が近づいてきました。
平成29年度税制改正により、配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しが行われ、平成30年度年末調整分より控除額等が改正されます。
改正点は以下の通りです。
1. 配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額の改正
① 配偶者控除の控除額が改正されたほか、給与所得者の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、配偶者控除の適用を受けることができないこととされました。
② 配偶者特別控除の控除額が改正されたほか、対象となる配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下とされました。
2. 扶養親族等の数の算定方法の変更
扶養親族等の数の算定に当たり、配偶者が源泉控除対象配偶者に該当する場合には、扶養親族等の数に1人を加えて計算することとされました。
また、同一生計配偶者が障害者に該当する場合には、扶養親族等の数に1人を加えて計算することとされました。
3. 給与所得者の扶養控除等申告書等の様式変更等
平成29年分の「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」(兼用様式)については、平成30年分は、「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」の2種類の様式とされました。
平成30年分の年末調整において、配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けるためには、「平成30年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「源泉控除対象配偶者」欄への記載の有無にかかわらず、「平成30年分 給与所得者の配偶者控除等申告書」を給与の支払者に提出する必要があります。
また、配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しに伴い、平成30年分以降、次の様式が変更されました。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書
- 従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の配偶者控除等申告書
- 給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿
平成30年度年末調整についてご不明な点がありましたら、弊社スタッフにお尋ねください。又は国税庁のHPにも税制改正等の情報が載っていますので、そちらをご覧ください。
-
消費税増税前のかけこみ購入は得か?
2018年10月2日
いまのところ2019年10月に消費税が8%から10%に増税される予定です。過去2回の増税の際には、増税の直前で家や車など高額な買い物が増え、増税後では余計に消費が冷めてしまうという現象が起こっております。
今回はこの「かけこみ購入」が万人にお得かどうかを検証します。
①一般の消費者の方
かけこみ購入がお得です。当たり前です。安く買えますから。(ただし、住宅の購入では、増税後では直系尊属からの住宅資金贈与の非課税枠が広がりますので、10%になってからのほうがいろいろと得する方もいます)
②消費税の免税事業者の方
一般消費者の方と同じで、安く購入したほうがお得です。どうせ買うなら、ぜひ、かけこんでください。
③簡易課税制度を選択されている方
簡易課税とは消費税の計算を売上の業種から計算する方式です。売上しか考慮しないため、仕入や備品の購入時にいくら消費税を払っていても控除できませんので、一般消費者の方と同じで、安く購入したほうがお得です。 (自社が簡易課税かどうかは、消費税の申告書の右上に『簡』と書いてあるかで確認できます。)
④課税売上割合が95%以上の方
消費税を納税している方で、簡易課税以外の場合は、ほとんどが該当します。消費税の計算で、仕入や備品購入時の消費税をほぼ全額控除できます。そのため、増税後に購入しても、その分消費税の納税額が減るため、かけこみ購入をする必要はありません。
⑤課税売上割合が95%未満の方
課税売上割合とは、課税売上と非課税売上の合計に占める課税売上の割合です。例えば、消費税が非課税である社会保険料診療を営む医療機関や、非課税である土地の売買が多い不動産業者などが該当します。これらの方は、購入するものにもよりますが、払った消費税が一部控除できなくなりますので、どうせなら増税前に購入しておくのが良いでしょう。
毎年売上が5千万円を超えているような事業者でしたらほぼ「4」に該当しますので、別段無理していろいろなものの購入を急ぐ必要がない会社が意外と多いはずです。消費税の増税で投資計画を変更する必要があるか再度ご検討ください。
-
広すぎる宅地の評価について
2018年10月2日
土地を所有している方がお亡くなりになったり、贈与したりした場合、その土地の相続税評価額を基に相続税や贈与税が課税されます。
手頃な広さの土地であれば使い勝手が良いでしょうが、広すぎると逆に不都合なことがある場合もあります。例えば、戸建住宅用地として分割して分譲する場合、次のようなことが考えられます。
①道路、公園等を作る必要があり「潰れ地」が生じる
②下水道等の供給処理施設の工事費用や販売・広告費等が掛かる
③販売区画が多くなるほど完売までに長期間を要し、売残りリスクも高くなる
そこで1,000㎡(三大都市圏は500㎡)以上の地積の宅地について、要件を満たせば評価額が減額される「地積規模の大きな宅地の評価」の規定が新設され、平成30年1月1日以後の相続・遺贈・贈与から適用されます。これに伴い、従前の「広大地の評価」は廃止されました。
要件などの詳細は、国税庁作成のパンフレットをご参照ください。
-
軽減税率対策補助金で注意喚起
2018年9月4日
先月の税務ページの記事でも、軽減税率制度への対応について触れましたが、今月はこのうち、補助金について書かせていただきます。
補助金制度は、中小企業者を対象に打ち出された政策の1つです。例えば、複数税率対応のレジを導入する場合は、1台20万円を上限に補助金を受け取ることが出来ます(A型)。この他、受発注システムの改修や入替は1,000万円を上限とした補助(補助率:費用の3分の2)もあります(B型)。この補助金申請は、平成31年9月30日までに導入・改修等したものについて、平成31年12月16日までに申請する必要があります。
この補助金は、既に7万件を超える事業者に対して交付されている状況となっているようですが、管轄官庁である経済産業省中小企業庁より補助金の申請に当たっての注意喚起の文書が先日発行されました。
これによると、公募要領や申請の手引きなどをしっかりと読み込まず、申請して却下されるケースや、不適切と思われる申請案件が見受けられ、軽減税率対策補助金事務局の手続きが煩雑となり、補助金審査や支給に支障を来たしているとのことです。
また、過去にあった補助金の不正受給について具体例が示されおり、その多くがA型の「複数税率対応のレジ導入」に関する事例で、現地調査により申請内容と実態が合っていないと判明された件についてや、レジ販売者からの勧誘で不正受給に発展するようなレジ購入を行い、結果的に購入側の事業者が負担を強いられたケースもあったようです。
経済産業省中小企業庁では、「申請に当たっては、公募要領や申請の手引き等をしっかりと読み込みこんでいただき、不明点があれば軽減税率対策補助金事務局コールセンターに問い合わせするなど、間違いのないようにお願いします」と呼びかけています。
平成30年8月13日に発行された注意喚起の全文
-
外国人を雇用した場合の給与等の源泉徴収
2018年9月4日
外国人社員に対して給与等を支払う場合、その外国人が居住者か非居住者のどちらに該当するのかにより、取り扱いが異なります。
所得税・住民税の源泉徴収(給与等)
①居住者の場合 ・・・ 日本人と同じです。
②非居住者の場合
所得税は、一律20.42%の源泉徴収をし、年末調整の対象からも外れます。
地方税は、非課税です。
*所得税には、復興特別所得税を含みます。
短期滞在者の免税制度
非居住者であっても、次の要件を満たせば免税となる特例があります。
①日本国内に滞在する期間が年間183日以内
②非居住者で、外国の会社の使用人であること
③給与等の支払者が日本国内で給与等を損金処理していないこと
<参考>
居住者とは、日本国内に住所があるか又は現在まで引き続いて1年以上居所がある個人です。
非居住者とは、居住者以外の個人をいいます。具体的には、1年未満の短期滞在を予定している者がこれに該当し、国内源泉所得のみが課税対象とされます。
居住者と非居住者の区分(国税庁HPより)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2875.htm
-
軽減税率制度への対応には準備が必要です
2018年8月3日
平成31年(2019年)10月1日から、消費税及び地方消費税の税率が8%から10%に引き上げられるのと同時に、消費税の軽減税率制度が実施されます。軽減税率制度の実施に伴い、消費税の税率は、軽減税率(8%)と標準税率(10%)の複数税率となります。
軽減税率(8%)の対象品目は次のとおりです。
● 酒類・外食を除く飲食料品
● 週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)
軽減税率制度は、全ての事業者に関係があります。
国税庁HPにおいて、次の留意点についてのパンプレットが公表されています。
①レジの入替えやシステムの改修について
②請求書等の記載事項について
③帳簿の区分経理・記載事項について
国税庁HP
http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/06.pdf
-
逓増定期保険を利用した節税について
2018年8月3日
先日新聞記事やヤフーニュースで全額損金になる逓増定期保険を利用した節税が横行しており、もうすぐ国の規制が入るのではないかという記事が取り上げられていました。実際、大手保険会社が相次ぎ逓増定期保険の新商品を売り出し、かなりの売れ行きだそうです。現状、逓増定期保険に加入し、正しく税務処理をした場合に全額損金となったときは、もちろんその行為は脱税ではなく、節税として認められます。
ここで、逓増定期保険について解説しますと、『保険期間の経過により保険金額が5倍までの範囲で増加する定期保険のうち、その保険期間満了の時における被保険者の年齢が45歳を超えるもの』という定義付けされており、税務処理では保険期間満了の時における被保険者の年齢が45歳を超えるものは保険内容によって1/2損金算入、1/3損金算入、1/4損金算入のいずれかに該当することになります。そのため、保険期間満了時の被保険者が45歳以下であれば全額損金算入となるというカラクリです。
実は、平成20年にも同様の節税が横行したため、この保険期間満了時の年齢が60歳から45歳に引き下げられた経緯があります。ですので、今後、国の規制が入るとすれば、被保険者がかなり若くないと全額損金算入とならない可能性があります。平成20年の改正の際には、それ以前に加入していた保険契約については、その後も改正前と同様の処理が認められましたので、今回も規制される前に加入するという会社も多くなるのではないでしょうか。
このような節税保険を利用する場合は次の点に注意してください。
①解約返戻金のピークまで数年間のあいだ保険料を払い続けなければいけませんので、単年度でたまたま調子が良かったからといって保険料を高めに設定しすぎると、その後の年度に無理が生じる可能性があります。
②解約返戻金のピークで解約すると、解約返戻金が法人の益金になります。解約年度で役員の退職金など何らかの損失要因がなければ、せっかくの保険料での節税が無駄になります。
やみくもに節税になるから利用するのではなく、中長期の利益計画・資金計画をした上での利用が重要です。
もし、セーフティー共済の利用がまだでしたら、このような節税保険と同様の効果が見込めますので、ぜひおすすめです。節税保険と異なり、掛金も毎年変更できますし、解約返戻金のピークを意識せず、必要なときまで取り崩さずにストックできます。月額20万円という縛りや最大800万円が上限ですので限界はありますが、併せてご検討ください。