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〈役員が退職後も経営に従事していたかどうかが争われた裁判事例〉
2024年8月2日
役員退職金が損金に算入するかどうかについては、形式的な登記事項の事実だけではなく、実質的に退職していたかどうかということも重要な論点となります。実際に退職していた事実があったかどうかが争われた裁判事例がありますので、今回ご紹介します。
請求人が請求人の元代表者に退職金として支払った金員は、当該元代表者に退職の事実があるから、損金の額に算入されるとした事例
《ポイント》
本事例は、請求人の代表取締役及び取締役を辞任した元代表者が、辞任後も継続して請求人の事業運営上の重要事項に参画していたとは認められず、請求人を実質的に退職していなかったとは認められないとしたものである。《要旨》
原処分庁は、請求人の元代表取締役(本件元代表者)が、退職後においても、引き続き請求人の経営に従事しており、みなし役員に該当するから、実質的に退職したとは認められないとして、請求人が本件元代表者に支払った退職金の金額(本件各金員)は、法人税法第34条《役員給与の損金不算入》第1項括弧書き所定の退職給与に該当しない旨主張する。
しかしながら、原処分庁がその認定の根拠として摘示する各事実には、いずれもその裏付けとなる退職当時の客観的な証拠がなく、各関係者の各申述においても、本件元代表者の請求人への具体的な関与状況が明らかではない。そして、本件元代表者は、退職後に請求人から報酬等を受領していないと認められ、本件元代表者の退職後に請求人の代表取締役となった者が、その代表取締役としての職務を全く行っていなかったと認めるに足りる証拠もないことからすると、本件元代表者が退職後も継続して、本件各法人の経営に従事していたと認めることはできないから、本件各金員は、退職給与として、本件各法人の損金の額に算入される。《参照条文等》
法人税法第34条第1項《参考判決・裁決》
東京地裁平成29年1月12日判決(税資267号順号12952) -
〈令和6年度分の路線価図等の公開について〉
2024年7月2日
相続税・贈与税の土地などの評価に用いる令和6年分の路線価図等が、7月1日(月)11時に公開されました。
路線価とは、市街地的形態を形成する地域の路線(不特定多数が通行する道路)に面する標準的な宅地1㎡当たりの土地評価額のことで、例年7月に1月1日時点の価額が公表されています。
国税庁のホームーページで全国の過去7年分の路線価図等を見ることができます。
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〈所得税の予定納税と減額申請〉
2024年7月2日
前年分の予定納税基準額が15万円以上である場合は、税務署から送付された通知に基づきその年の所得税の一部を納める必要があります。令和6年分の第1期分は定額減税の影響により、予定納税の税額の減額を求める申請期限と納期が延長されています。
1.予定納税額の計算と納付
予定納税額は予定納税基準額を基に計算され、原則として2回、通知書に記載された税額を納めます。1回あたり予定納税基準額の3分の1相当額となりますが、令和6年分の第1期分の予定納税額はその税額から本人分の定額減税額相当額(30,000円)を控除した残額となります。
※同一生計配偶者又は扶養親族に係る定額減税額に相当する金額については、予定納税額の減額申請の手続により、控除の適用を受けることができます。この手続により減額されるべき金額のうち、第1期分の予定納税額から控除してもなお控除しきれない部分の金額は、 第2期分の予定納税額から控除されます。
2.納期
第1期分
令和6年7月1日(月)~9月30日(月)※例年より2か月程延長
第2期分
令和6年11月1日(金)~12月2日(月)
3.予定納税額の減額
廃業、業績不振等の要因でその年分の納税額を見積もったときに予定納税基準額よりも少なくなると見込まれる場合、申請を行い承認されると予定納税額を減額できます。(予定納税の減額申請)
予定納税額を減額するために、扶養している家族分の定額減税額相当額を控除して欲しい場合にはこの減額申請手続きを行います。ただし、計算の基準日の現況による本人の令和6年分の合計所得金額の見積額が1,805万円を超える場合や、本人が非居住者である場合には、本人分とともに扶養している家族分の定額減税額相当額の控除を適用することはできません。
4.申請の提出期限
第1期分及び第2期分
計算基準日:令和6年6月30日(日)
提出期限:令和6年7月31日(水) ※例年より半月程延長
第2期分
計算基準日:令和6年10月31日(木)
提出期限:令和6年11月15日(金)
詳細等につきましては、下記URLをご参照ください。
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個人住民税の定額減税
2024年6月4日
令和6年度税制改正において、令和6年分の所得税及び令和6年度分の個人住民税において定額減税が実施されます。個人住民税の定額減税の概要は下記の通りです。
1.対象者
令和5年の合計所得金額が1,805万円以下の個人住民税所得割の納税義務者
2.減税額
(1)本人 1万円
(2)控除対象配偶者 1万円
(3)扶養親族 1万円/人
(4)控除対象配偶者を除く同一生計配偶者 1万円
※1 居住者に限る
※2 同一生計配偶者及び扶養親族の判定は、原則、前年12月31日の現況による
※3 控除対象配偶者以外の同一生計配偶者の場合は、令和7年度分の個人住民税より定額減税される
3.徴収方法
(1)給与所得者
給与所得に係る特別徴収において令和6年6月分は徴収されません。
定額減税後の税額が11等分され、令和6年7月分から令和7年5月分として特別徴収されます。
(2)普通徴収対象者
第1期分(令和6年6月分)の税額から控除され、控除しきれない場合は第2期分以降の税額から、順次控除されます。
(3)年金所得者
公的年金等の所得に係る特別徴収において定額減税前の税額をもとに算出された令和6年10月分の特別徴収税額から控除され、控除しきれない場合は、令和6年12月分以降の特別徴収税額から、順次控除されます。
4.その他
(1)減税額は、納税通知書の裏面又は特別徴収税額通知書の摘要欄に記載されます。
(2)定額減税は、住宅ローン控除や寄附金税額控除など、全ての控除が行われた後の所得割額から減税されます。
(3)減税しきれない場合は、別途給付金(調整給付)が支給されます。
詳細等につきましては、下記URLをご参照ください。
内閣官房
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/benefit2023/index.html
総務省
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/02zeimu04_04000129.html
横浜市
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〈令和6年分の贈与から贈与税・相続税の計算方法が変わります〉
2024年6月4日
令和6年から施行された相続時精算課税の改正により、贈与と相続のルールが一新されました。年間110万円の基礎控除が設けられましたが一度相続時精算課税制度を選択すると暦年課税へ変更することができない点は変わりません。相続時精算課税制度を選択するかどうかは慎重に検討する必要がありますので、当社スタッフまでご相談ください。
① 相続時精算課税に係る基礎控除の創設
相続時精算課税を選択(※1)した受贈者(以下「相続時精算課税適用者」といいます。)が、特定贈与者 (※2)から令和6年1月1日以後に贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、暦年課税の基礎控除とは別に、贈与税の課税価格から基礎控除額110万円(※3)が控除されます。
また、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算されるその特定贈与者から令和6年1月1日以後に贈与により取得した財産の価額は、基礎控除額を控除した後の残額とされます。
※1 相続時精算課税は、原則として、①贈与者が贈与の年の1月1日において60歳以上であり、②受贈者が同日において18歳以上で、かつ、贈与時において贈与者の直系卑属である推定相続人又は孫である場合に選択することができます。
なお、相続時精算課税を選択した場合、その後、同じ贈与者からの贈与について暦年課税へ変更することはできません。
※2 特定贈与者とは、相続時精算課税の選択に係る贈与者をいい、令和5年分以前の贈与税の申告において相続時精算課税を選択した場合も含みます。
※3 同一年中に、2人以上の特定贈与者からの贈与により財産を取得した場合の基礎控除額110万円は、特定贈与者ごとの贈与税の課税価格で按分します。 (注)相続時精算課税を選択した場合、その特定贈与者からの贈与について暦年課税の基礎控除の適用はできません。
② 暦年課税による生前贈与の加算対象期間等の見直し
相続又は遺贈により財産を取得した方が、その相続開始前7年以内(改正前は3年以内)にその相続に係る被相続人から暦年課税による贈与により財産を取得したことがある場合には、その贈与により取得した財産の価額(その財産のうち相続開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、その財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとされます。
加算対象期間について
この改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用されます。 具体的な贈与の時期等と加算対象期間は次のとおりです。
贈与の時期 加算対象期間 ~R5年12月31日 相続開始前3年間 R6年1月1日~ 贈与者の相続開始日 R6年1月1日~R8年12月31日 相続開始前3年間 R9年1月1日~R12年12月31日 R6年1月1日~相続開始日 R13年1月1日~ 相続開始前7年間 国税庁:(令和6年1月1日以後に贈与を受ける方へ) お知らせ 令和6年分の贈与から贈与税・相続税の計算方法が変わります!
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<新たな経済に向けた給付金・定額減税一体措置>
2024年5月8日
3月14日、内閣官房は定額減税で減税しきれない場合に給付される給付金等に係る「新たな経済に向けた給付金・定額減税一体措置」の概要を公表しました。
「定額減税しきれないと見込まれる方への給付金(調整給付)」
定額減税において、納税者本人と扶養親族(配偶者を含む)の数から算定される減税額が、定額減税を行う前の所得税額・個人住民税所得割額を上回っており、定額減税しきれないと見込まれる場合は、自治体から定額減税しきれない差額が給付されることになりました。
給付額は、所得税の控除不足額と個人住民税の控除不足額を合わせたのち、1万円単位で切り上げて給付が行われます。なお、令和5年の課税状況により算定されるため、令和6年分の所得税が確定した後、令和5年と比較して所得に変動があり当初の給付額に不足があった場合には、追加で給付が行われます。
「給付金の申請及び給付の方法」
通常の場合、個人住民税が課される自治体の準備ができ次第給付対象者へ案内を行う予定となっています。書面での申請またはオンライン申請に対応している自治体においてはオンラインで申請をすることによって給付が行われます。
具体的な手続きや給付方法は自治体ごとに異なりますので、お住まいの自治体から送付される申請書・確認書等の内容をご確認ください。
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〈いわゆる「分譲マンション」の相続税評価が変わりました〉
2024年5月8日
令和6年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した「居住用の区分所有財産」(いわゆる分譲マンション)の価額は、新たに定められた個別通達※により評価します。
※令和5年9月28日付課評2-74ほか1課共同「居住用の区分所有財産の評価について」(法令解釈通達)
相続税におけるマンションの評価方法についての見直しの動きについては当ページ2023年9月4日掲載の記事にて紹介していますが、相続税評価額が最低でも市場価格の60%になるよう評価額を補正することになります。より評価方法が複雑になりますので、当社スタッフまで気軽にご相談ください、
Ⅰ「居住用の区分所有財産」の評価方法の概要
1.概要
居住用の区分所有財産(一室の区分所有権等)(注1)の価額は、次の算式のとおり評価します。ただし、下記2に掲げるものについては、この個別通達の適用はありません。
(注1)「居住用の区分所有財産(一室の区分所有権等)」とは、一棟の区分所有建物(区分所有者が存する家屋で、居住用に供する専有部分(注2)のあるものをいいます。以下同じです。)に存する居住用の用に供する専有部分(注2)一室に係る区分所有権(家屋部分)及び敷地利用権(土地部分)をいいます。以下同じです。
(注2)「居住の用に供する専有部分」とは、一室の専有部分について、構造上、主として居住の用途に供することができるものをいい、原則として、登記簿上の種類に「居宅」を含むものがこれに該当します。以下同じです。
【算式(自用の場合)】
価額 = 区分所有権の価額(①) + 敷地利用権の価額(②)
- 従来の区分所有権の価額※ × 区分所有補正率(後述Ⅱ3参照)
※家屋の固定資産評価額×1.0
②従来の敷地利用権の価額※ × 区分所有補正率(後述Ⅱ3参照)
※路線価を基とした1㎡当たりの価額×地積×敷地権の割合(共有持分の割合)
(固定資産税評価額×評価倍率)
なお、居住用の区分所有財産が貸家及び貸家建付地である場合その貸家及び貸家建付地の評価並びに小規模宅地等の特例の適用については、この個別通達の適用後の価額(上記①及び②の価額)を基に行うこととなります。
2.この個別通達の適用がないもの
・構造上、主として居住の用途に供することができるもの以外のもの(事業用のテナント物件など)
・区分建物の登記がされていないもの(一棟所有の賃貸マンションなど)
・地階(登記簿上「地下」と記載されているものをいいます。以下同じです。)を除く総階数が2以下のもの(総階数2以下の低層の集合住宅など)
・一棟の区分所有建物に存する居住の用に供する専有部分一室の数が3以下であって、その全てを区分所有者又はその親族の居住の用に供するもの(いわゆる二世帯住宅など)
・たな卸商品等に該当するもの
(注)借地権付分譲マンションの敷地の用に供されている「貸宅地(底地)」の評価をする場合などにも、この個別通達の適用はありません。
Ⅱ「区分所有補正率」の計算方法
区分所有補正率は「1.評価乖離率」、「2.評価水準」、「3.区分所有補正率」の順に、以下のとおり計算します。
- 評価乖離率
評価乖離率 = A + B + C + D + 3.220
A・・・一棟の区分所有建物の築年数※ × △0.033
※建築の時から課税時期までの期間(1年未満の端数は1年)
B・・・一棟の区分所有建物の総階数指数※ × 0.239(小数点以下第4位切捨て)
※総階数(地階を含みません。)を33で除した値(小数点以下第4位切捨て、1を超える場合は1)
C・・・一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階※ × 0.018
- 専有部分がその一棟の区分所有建物の複数階にまたがる場合(いわゆるメゾネットタイプの場合)には、階数が低い方の階
なお、専有部分の所在階が地階である場合には、零階とし、Cの値は零
D・・・一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度 × △1.195(小数点以下第4位切上げ)
敷地持分狭小度(小数点以下第4位切上げ)=敷地利用権の面積※÷専有部分の面積(床面積)
※敷地利用権の面積は、次の区分に応じた面積(小数点以下第3位切上げ)
①一棟の区分所有建物に係る敷地利用権が敷地権である場合
一棟の区分所有建物の敷地の面積×敷地権の割合
②上記①以外の場合
一棟の区分所有建物の敷地の面積×敷地の共有持分の割合
(注)評価乖離率が零又は負数の場合には、区分所有権及び敷地利用権の価額は評価しない(評価額を零とする。)こととしています(敷地利用権については、下記3(注)の場合を除きます。)。
- 評価水準
評価水準(評価乖離率の逆数) = 1 ÷ 評価乖離率
- 区分所有補正率区分
区分 区分所有補正率 評価水準 < 0.6 評価乖離率 × 0.6 0.6 ≦ 評価水準 ≦ 1 補正なし(従来の評価額で評価) 1 < 評価水準 評価乖離率 (注)区分所有者が一棟の区分所有建物に存する全ての専有部分及び一棟の区分所有建物の敷地のいずれも単独で所有している場合には、敷地利用権に係る区分所有補正率は1を下限とします(区分所有権に係る区分所有補正率には下限はありません。)。
〇区分所有補正率は、国税庁ホームーページに掲載している「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」により簡便に計算することができます。