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中小企業の金融基礎知識 第15回
2017年10月3日
第2項でも述べたように、金融機関は返済の滞りを懸念し、保全を第一に考えます。中小零細企業や新規創業者などは特に信用力も乏しい為、債権の弁済の確保を考えるのです。その中で信用保証協会の制度は以前ご紹介しましたが、それ以外の保全となると担保という事になります。
(1)差し出す担保の種類・評価
①不動産担保
もっともポピュラーなものと言えます。所有している土地建物を担保として差し出す事で、融資を受ける事になります。担保評価については、土地の場合は、路線価もしくは地価を参考に土地の時価を算定し、「掛け目」を乗じて計算されます。ですので、担保価格は通常の時価よりも少なくなる事が一般的です。「掛け目」は金融機関によって多少の違いはありますが、概ね70%と言われています。一概に土地といっても農地や市街化調整区域などは売却が困難な為、担保評価しません。建物の場合は時間の経過に伴い劣化していくものですから、新築やRC造など耐用年数の長いものでないと担保価値がないと判断されることもあります。それでも担保設定時はいくら建物の価値がないとはいえ担保設定されてしまいます。理由は担保としている土地に建物がある場合、建物部分を担保していなければ、担保権行使時に法定地上権(賃借権)が成立してしまう場合があり、競売時に不利を受けてしまうからです。②預金担保
定期預金を担保にする方法。金銭の担保となりますので100%評価ですが、第11項で述べたようにこの方法で融資を受ける事はお勧めしません。③売掛債権担保・在庫担保・将来債権担保(ABL)
売掛債権や在庫など流動性の高いものも担保になる事があります。信用保証協会もこれらを担保とした制度があります。売掛債権については、売掛先の信用状況によって評価額が変わります。在庫担保もまちまちですが、概ね30%くらいの「掛け目」のようです。将来債権担保とは、将来発生する予定の家賃収入などを担保に設定する方法です。ここ最近では、太陽光の固定買取り制度に基づく収入を担保にして太陽光設備融資を行う銀行もあります。しかし、これら流動性の高い担保について金融機関がなかなか担保設定してくれません。先に述べたように保証協会に制度はありますが、あくまでも保証協会は債務保証をするところであり、しかも80%しか債務保証をしないので20%は金融機関が持つ事になります。そのために得体の知れない在庫に対して担保設定を行う事が殆ど行われないというのが現実的のようです。④その他
有価証券や生命保険など価値のあるものは基本的に担保設定できます。但し、生命保険などは銀行実務では殆ど見られません。(2)担保設定の種類
①質権
主に動産において、多く用いられる担保設定です。金融機関にそれを預け、約定どおりの返済が出来ない場合はその動産を売却して返済財源とすることの出来る権利を言います。質権設定をする場合、必ずその動産を預けなければなりません。
②抵当権主に不動産に設定します。質権とは違い、債務者はその不動産の使用収益を継続できます。もし債務不履行になれば、債権者はその不動産を競売して、返済に充当する事ができます。なお、抵当権は登記を行います。
③根抵当権抵当権の一種ですが、特定の融資を担保するものではなく、極度額設定を行い、その範囲内にある複数融資を担保する事ができるものです。金融機関は大抵、この設定を行います。反復して融資の利用が可能になる利点はありますが、その金融機関に全額返済をしないと根抵当権がはずれないというデメリットも生じます。
後、いくら極度額設定をしても、必ずその額までの融資が出来るということではありません。あくまでも不動産評価に基づきますので、極度額設定時1億円の評価があり7000万円の設定を行ったとして、評価次第で極度額まで融資を受けられないケースもあります。
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セーフティネット保証5号認定の指定業種
2017年10月3日
経済産業省が業績の悪化している業種に属する事業を行う中小企業を対象とするセーフティネット保証5号について、平成29年度第3四半期の指定業種を公表しました。指定期間は、平成29年10月1日から12月31日までです。
全体的には指定業種が184から80の業種が減少し、新たに57の業種が追加され、結果161の業種に減少しました。
新たに一般土木建築業、内装工事業、一般管工事業・その他の情報処理・提供サ-ビス業などが追加され、大工工事業、塗装工事業、鋳鋼製造業、土地売買業(投機を目的としないものに限る)などが指定から外れました。
経済産業省は、平成29年10月1日から平成29年12月31日までのセーフティネット保証5号の対象業種について、ホームページに掲載しております。(下記URLを選択すると経済産業省のホームページに移動します)
http://www.meti.go.jp/press/2017/09/20170920001/20170920001.html
セーフティネット保証5号の指定業種(平成29年10月1日~平成29年12月31日)
http://www.meti.go.jp/press/2017/09/20170920001/20170920001-2.pdf
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【神奈川県】神奈川県中小企業制度融資 小口零細企業保証資金
2017年10月3日
1.ご利用いただける方
従業員数20人(卸売業・小売業・サービス業の場合は5人)以下の小規模企業者
※医業を主たる事業とする場合を除き、NPO法人は利用不可(注) 小規模企業者とは
従業員数20人(卸売業・小売業・サービス業の場合は5人)以下の中小企業者及び協同組合等を指します。
2.融資条件
①資金使途 運転資金・設備資金
②融資限度額 1,250万円(全国の信用保証協会の保証付き融資残高との合計)
③融資利率(固定金利)1年以内:年1.2%以内
1年超5年以内:年1.7%以内
5年超7年以内:年1.9%以内
④融資期間 7年以内
⑤返済方法 分割返済(6か月以内の据置き可) ただし、融資期間1年以内の場合は一括返済も可
⑥担保 必要に応じて
⑦保証人 法人の代表者を除き原則不要
⑧信用保証料率融資期間1年以内:0.50%から2.20%
融資期間1年超 :0.50%から1.76%
上記融資制度について、詳しくは下記URLをクリックすると神奈川県のホームページへリンクします。ご参照ください。
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中小企業の金融基礎知識 第14回
2017年9月1日
融資を受ける際にどうしても気になるのが金利です。借入額や返済期間によっては1%違うだけで大きく違います。当然ですが融資を受ける側として金利は安ければ安いほど良いのですが、金融機関も企業ですので損をしてまで安くはしません。では、果たしてどのように金利は決定されるのか?これを押さえておけば、交渉時に役に立つと思います。
(1)金利決定の基本
銀行が貸す資金の大半は、自己資金ではありません。預金者の資金や、資金市場から調達して企業に貸付をします。その際に銀行は借りている相手に金利を支払わなければなりません。銀行の調達金利は一般企業で言う売上原価となるのです。まずはこの調達金利が基本となります。後は一般企業と同様、銀行の経費や前項7で解説した貸倒率などを勘案して金利を決定します。
ですから、前項1でも述べたように、全国規模であるメガバンクは、預金量も豊富で、貸出先も規模、件数ともに多いので、資金調達コストは安く、1件あたりの経費率が低い為、金利を安く設定できますが、信金クラスだと規模が小さいので1件あたりの負担が大きくなり金利を高く設定しなければならなくなるのです。
(2)固定金利と変動金利
固定金利は定めた期間の金利が変わらないものです。通常の定期預金などはこれに該当します。市場金利の増減があっても、金利は一定なので、市場金利の変動リスクを回避できますが、必ずしも得をするとは限りません。
変動金利は、国の政策に基づく金利やプライムレートなどを参考に変動していきます。ですから市場金利の影響をもろに受けます。
金融機関側からすると金利を固定することは将来の金利変動リスクが生じる事になりますので、その分変動金利と比べると高めの設定になる事が多いです。住宅ローンを例に挙げると、平成27年7月現在で某大手金融機関の基準金利で変動金利が2.475%に対し固定金利(20年)4.85%とかなり差があります。(金融機関によって様々ですが・・・)
ですので、最近の住宅ローンは変動金利を選択される方が多いです。
(3)金利の基準
①短期プライムレート
俗に言う「短プラ」で、金融機関が優良企業向けに対して短期(1年以内)で貸し出す時に適用する最優遇貸出金利を言います。金融機関はこの金利を基準として企業の信用リスクの大小で上乗せ金利を付け加え決定しています。この金利は以前公定歩合に連動していましたが、現在は譲渡性預金や市場金利(金融機関同士が資金の貸し借りに適用する金利)に連動しています。全国的にはメガバンクのレートが基準となり、各都道府県ではその地域の有力金融機関のレートが基準になっています。
②長期プライムレート
俗に言う「長プラ」で、長期(1年超)で.貸し出す際の最優遇金利を言います。但し、企業向け長期融資に対する基準では殆どの場合、前述の「短プラ」連動を採用しており、この基準を採用するケースはあまりないようです。
③TIBOR(タイボー)
日本の東京市場における銀行間金利を言います。名称の由来は世界中の金融機関金利水準をLIBOR(ライボー London Inter-Bank Offer Rateの略)と言いますが、これの東京版の為TIBORとなったようです。この金利も企業向け貸出金利の基準になる事があります。プライムレートとの違いは圧倒的にTIBORの方が低金利である事です。この金利水準を採用する融資にスプレッド融資をいうものがあるのですが、この融資を採用する為には大抵の銀行は1億円以上の貸出であり、短期融資に限られる為、それなりの格付を与えられるような企業でないと受ける事が出来ないものであります。
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【東京都】創立80周年記念特別保証制度(サンクス80)
2017年9月1日
東京信用保証協会は創立 80 周年を迎えるにあたり、特別な低保証料率の保証制度「サンクス 80」を 創設し、平成 29 年 9 月 1 日より取り扱いを開始します。
本制度は、お客さまの資金需要・企業規模に応じて2種類の取扱いをご用意しています。
取扱期間 平成29年9月1日から平成30年3月30日(東京都信用保証協会受付分)まで
詳しくはこちら(制度概要)をご覧ください。
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中小企業の金融基礎知識 第13回
2017年8月2日
運転資金とは、経営を行うにあたり、非常に重要なものです。では、御社にとって必要最低限の「運転資金」はどれくらいなのか?これは、経営者は絶対把握していなければならないものです。当然ですが金融機関もこのポイントはしっかりと押さえてきます。
(1)運転資金が必要となる場合はどういう時なのか
①入金と支払のずれ
売上入金と仕入支払の時期は必ずしも一致しません。仮に売上の入金サイトが翌末払いで仕入の支払サイトが翌20日だったとして、100万円の仕入を行い翌日に150万円で売ったとしたら、翌月の20日には売上入金がない状態で100万円を先行払いしなければなりません。10日もすれば売上入金が150万円ありますが、翌月20日には次の仕入代金を支払わなければなりません。こうした入出金のずれを解消する為に最低でも最初に支払わなければならない100万円は必要最低限の運転資金となります。②在庫
在庫を持つ為にも当然ですが資金が必要です。在庫は売らないと資金回収が出来ないので、これも必要最低限の運転資金となります。③ランニングコスト
従業員の給料や事業所の家賃等の固定費は、業績の有無に関わらず発生します。本来ならば、業績でこの分までカバーできていないと事業そのものが成り立たないのですが、新規事業を行う際は、軌道に乗るまでの間、この部分の運転資金は必要となります。金融機関の観点では、概ねかかる固定費の3か月分とされているようです。(2)決算書や試算表から読み取られる経常運転資金
金融機関も上記①~③を基本としてその企業の必要運転資金を算定します。では、どのようにして捉えているのか?それは、こちらが提示する決算書や試算表から読み取られています。計算式は 売上債権+棚卸資産―仕入債務となり、それがその企業の適正運転資金という事になります。これを経常運転資金と言います。但し、前項の6でも述べたように、売掛金や在庫の残高が適正かどうかは見られます。年商規模に対してあまりにも多い場合には、理由を問われます。
(3)運転資金の融資を受けるためのポイント
①融資期間
本来、運転資金の不足は売上金の回収が行われればすべてが解消されるはずなので3ヶ月くらいの融資期間があれば資金不足は解消される計算ですが、企業経営は単発ではなく常に動いています。その都度、融資を実行、返済を繰り返せばそれだけ手続きも煩雑になってしまい、資金繰りも一向に安定しません。更に右肩上がりの経営であれば、経常運転資金はどんどん拡大していきますので、常に資金不足となってしまいます。ですから大抵の場合は、中長期的に期間を設定し分割返済を行う事で資金繰り安定化を行います。本来ならば1~3年が妥当なところなのですが、協会保証や公庫利用の場合は5年返済が一般的です。
②審査のポイント
(2)で説明した経常運転資金が金融機関の審査で大きく関わってきます。運転資金融資総額が、経常運転資金の範囲内であれば「健全」と判断されますので、比較的スムーズに融資が実行される事が多いようですが、逆の場合は慎重に審査をされるようです。そうした場合は、試算表や資金繰り表は当然ですが、事業計画書の作成や明確な資金使途の説明が出来るようにしておかなければなりません。
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【横浜市】「継続型短期保証」および「経営支援付長期設備資金保証」
2017年8月2日
横浜市信用保証協会は本年創立70周年を迎えることを機に横浜市内の中小企業のお客さまへのサービスの向上を図るため、「継続型短期保証(けいたん)」(運転資金)・「経営支援付長期設備資金保証(けいちょう」(設備資金)のメニューを新たに追加し、平成29年7月3日より取り扱いを開始しました。
「継続型短期保証」は、経常運転資金の一部について、定時償還を伴わない一括払い方式の短期運用を用いて一定期間継続してご利用いただくことにより、疑似資本的な資金調達が可能となります。
「経営支援付長期設備資金保証」は、最長20年の長期保証で新たな設備投資等を後押しするとともに、設備導入後に専門家が診断・助言(原則3回無料)を行うことで、生産性の向上を支援いたします。詳しくはこちら(制度概要)をご覧ください。
「継続型短期保証」はこちら
http://www.sinpo-yokohama.or.jp/system/detail_02/detail_020601.html
「経営支援付長期設備資金保証」はこちら
http://www.sinpo-yokohama.or.jp/system/detail_02/detail_020701.html