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中小企業の多額の役員借入金に要注意

2017年7月4日

税務

「先生、相談があります。私は会社にお金を貸していて、会社の決算書には多額の役員借入金があります。私に相続があった場合、この役員借入金に相続税がかかるって聞いたのですが本当ですか?」

「はい、役員借入金は社長個人からしてみれば貸付金ですので当然相続財産となります。ただし、相続税の計算には、基礎控除額というものがあり、相続財産の総額が基礎控除額以下であれば相続税はかかりませんよ。ちなみに役員借入金残高はいくらあるのですか?」

「4,000万円あります。減らさなくてはと思っていたのですが、会社の資金繰りもあまり良くない状況でなかなか返済が進まずこんな残高になってしまって困っています。私もだいぶ高齢になりまして・・・。」

「4,000万円ですか・・・。かなり高額ですね。相続税の基礎控除額は3,000万円に法定相続人1人につき600万円を加算しますので、社長の場合は3,000万円に600万円×2人を加算して4,200万円です。役員借入金以外にも当然財産をお持ちでしょうから相続税がかかってしまいますね。」

「先生、何か良い方法はありませんか?」

「役員借入金を減らす方法は主に4つあります。①役員借入金を社長に返済する ②社長が役員借入金を放棄する ③社長が役員借入金を他者に贈与する ④増資してその資金で役員借入金を返済する」

「4つも方法があれば、あっという間に役員借入金の残高を減らすことができますね!!

そうなれば相続税を払わずに済むから安心ですよ。」

「確かに役員借入金を減らせば相続財産の総額は基礎控除額以下になるかもしれませんね。

でもよく検討して実行しないと、場合によっては法人税や贈与税が発生するケースがありますので注意が必要です。」

「えっ!!相続税が減少したのに法人税や贈与税が増えたら役員借入金を減らした意味がないじゃないですか。」

「だからよく検討する必要があるんですよ。」

役員借入金は短期間での現金化が難しく、相続税の納税資金に充てることが困難なため、相続が発生した場合には厄介な存在になることが多いです。自分が現在いくら会社に貸しているのかをしっかり把握し、早いうちから対策をとっていくことが大切です。

相続税を減らす目的で役員借入金を減らしたことで、法人税や贈与税が発生するケースもありますのでいろいろな角度から検討することが必要です。詳しくは当社までご連絡ください。

役員借入金を減らす4つの方法と注意点

1.役員借入金を社長に返済する

当たり前の話ですが、役員借入金を返済すれば役員借入金残高は減少します。もし、役員報酬を取っているのであれば、役員報酬を減額し、その資金で役員借入金を返済するのも良いと思います。役員報酬は給与所得ですので所得税や住民税の対象になりますし、社会保険の対象にもなりますが、役員借入金の返済は給与所得ではありませんので所得税などは一切かかりません。ただし、役員報酬を減額すれば会社の経費は減り、利益が増加しますので今度は会社の法人税等が増加する可能性があります。言うまでもありませんが、借入金の返済を受けた現金をそのまま保有し続ければ役員借入金が減少して、同額の現金が増加しますので相続財産の総額は変わりません。

2.社長が役員借入金を放棄する

社長が役員借入金を放棄すれば、役員借入金残高は減少します。会社は役員から借入金返済の免除を受けることになりますから、債務免除益という収益が計上され、会社の利益が増加し、会社の法人税等が増加する場合があります。しかし、会社に法人税法上の繰越欠損金がある場合、利益は繰越欠損金と相殺されますので繰越欠損金が利益よりも大きければ法人税等は課税されません。

ただし、贈与税が課税される場合がありますので注意が必要です。会社が債務免除を受けることになると、会社の株価が上昇する可能性があります。この場合、債務免除を受けた分だけ負債が減少し純資産が増加することになりますから、会社の株価が上昇し、債務免除をした社長から株主へ株価上昇額の贈与があったとみなされ、株主に贈与税が課税されます。

一般的な手続きは、債務免除をする社長が、会社に対し「債権放棄通知書」を提示し、会社は取締役会で決議しますので「取締役会議事録」を作成することになります。

3.社長が役員借入金を他者に贈与する

役員借入金自体を贈与することにより、役員借入金残高を減少させます。贈与ですので当然贈与税の問題が発生しますが、贈与税にも基礎控除額があります。贈与税の基礎控除額は暦年で贈与を受けた人ごとに110万円です。例えば、毎年100万円ずつ贈与すれば、贈与税が課税されずに社長の役員借入金残高を減らすことができます。金額的には小さい金額ですが10年あれば1,000万円の役員借入金を減らすことができます。また、社長の相続財産が多く、高い税率の相続税が課税されると予測される場合には、相続税と贈与税の税負担率を比較して、贈与税の方が有利であれば、多少贈与税を支払ってでも贈与した方が良い場合もあります。

一般的な手続きは、贈与契約書を作成して贈与を実行し、翌年3月15日までに贈与税の申告をすることになります。

4. 増資をしてその資金で役員借入金を返済する

資本金を増資して、その資金で役員借入金を返済して残高を減少させます。役員借入金が資本金に姿を変えることになりますので、今度は自社の株式が相続財産となります。しかし、会社が債務超過の状況であれば、その債務超過が解消されない範囲で増資をすれば株価は0円となりますので相続財産は減少することになります。増資をすると会社の均等割という税金が増加する場合がありますので注意が必要です。

一般的な手続きは、増資の登記が必要です。

また、役員借入金を資本金に振り替える方法もありますが、この場合は役員借入金の時価が問題となります。役員借入金の簿価と時価に差額があればその差額は債務免除益となりますので注意が必要です。

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