中小企業の金融基礎知識連載 第7回
2017年2月1日
金融機関から見た企業診断方法その2~銀行格付けの話~
第6回で述べたとおり、金融機関は決算書を元に独自のスコアリングに基づき、当該企業の「格付け」を行っています。
「何もわからないくせに、勝手に人の会社を評価するな」と怒られる方もいらっしゃるかと思われますが、この「格付け」によって、融資実行の有無や、保証協会案件かプロパーか、金利設定などが決まってきます。ですので、少しでもこの格付の事を理解したうえで、格付けを上げる為の対策を行う事をすべきだと思います。
(1) 格付けの種類
銀行格付けは10段階評価によっており、種類は大きく分けて6つあります
1~6 正常先 :業況が順調で、かつ財務内容にも特別の問題がないと認められる
債務超過解消年数=1年以内、債務償還年数=10年以内
7 要注意先 :元本の返済もしくは利息の支払いが延滞している債務者
経常利益が2年連続赤字
債務超過解消年数=2~3年
債務償還年数=10~15年
8 要管理先: 利息の支払いが3ヶ月以上延滞している債務者
債務超過解消年数=3~4年
債務償還年数=15~30年
※金利の減免、利息の支払猶予、元本返済猶予、債権放棄等の取決
を行った債務者
9 破綻懸念先:事業を継続しているが、実質的に債務超過の状態にあり、元本
及び利息の回収に重大な懸念がある。現在経営破綻の状況ではな
いが、経営難の状態であり、今後経営破綻に陥る可能性がある
債務超過解消年数=5年以上
債務償還年数=30年以上
10 実質破綻先・破綻先:
再建の見通しがなく、実質的に経営破綻している。
法的・形式的に経営破綻
一般的に中小企業は金融機関との正常取引を行っているところは6~7の間に位置付けられている事が多いようです。
(2) 格付けの意味
では、なぜ金融機関は「格付け」をするのでしょうか?それは、この格付けに応じて「債務者区分」をした上で金融機関は貸倒引当金を設定することが義務付けられており、それぞれの区分に応じて設定率が違うからです。
引当率には過去の実績に応じて多少バラツキがあるようですが一般的には以下の通りです。
正常先、要注意先 債権額の0.3%~0.5%
要管理先 債権の無担保部分※に対し20%程度
破綻懸念先 債権の無担保部分に対し70%程度
実質破綻先・破綻先 債権の無担保部分に対し100%
※無担保部分とは・・・融資を受ける際に土地等の有担保設定や協会保証をした
場合に、土地等の場合は担保設定額(時価が設定時より低
い場合は時価相当額)、保証の場合は保証額を除くとされ
ます。
金融機関は自己資本比率に規制があり、自己資本が減少することを一般企業以上に嫌います。引当金を多く積む=自己資本が減少するという事なので、
正常先・要注意先には貸出しても金利設定次第では十分採算可能ですが、要管理先以下は損をしますので、ほぼ融資は出来ないと言うことになります。
上記の事でわかるとおり、金融機関と正常な取引を行うためには最低でも要注意先にとどまる事が必要なのです。