中小企業の金融基礎知識連載 第6回
2017年1月11日
(1)決算書
企業が金融機関から融資を受ける際、金融機関は決算書のどこを見ているのでしょうか?皆様は、そこが知りたいと思われます。正直言って、金融機関によって様々なので一概にどこと言い切ることは出来ませんが、今までの経験から一般的なポイントの説明を致します。
1.債務超過かどうか
まずは、これを確認します。債務超過とは決算書における貸借対照表の「資本の部合計」又は「純資産の部」がマイナスになっていることです。言い換えると資産より負債が多い事を言います。
資産<負債という事であると単純に、現在清算してしまうと確実に借金が残る為、金融機関は相当懸念します。特に新規案件なんかは、取り上げてくれることすらしません。
但し、中小企業の場合は、金融機関マニュアルに「役員等借入金」で返済期日の記載のない劣後債務については自己資本として勘案するという事が記載されています。
後、社歴の古い会社にありがちですが、資産勘定に土地があり、その含み益がある場合もその資産を時価評価した上で判定してもらえます。
2.不良資産はあるかどうか
貸借対照表上、債務超過でなくても資産項目に不良資産があるかどうかを見られます。不良資産と見られれば、その分は資産から除外され判定されます。
不良資産と見られがちなものは以下の通りです。
・年商規模の割に売掛金が多い(売掛金額が平均月商の3ヶ月以上)
・売掛金と買掛金のバランスが悪い
・在庫過多(業種や取扱い商材にもよりますが一般的には在庫回転率が2ヶ月以上)
・役員貸付金(特別な事情を除き、あった時点で資産評価0)
・仮払金 (同上)
・減価償却されていない有形固定資産(法定減価償却費を除いた額が評価額)
売掛金については、明細はもちろんの事、いつ入金されたのか事後説明が必要となります。
在庫については年々増加し回転率が悪くなれば、業績不振によるデットストックの増加や在庫を操作することにより利益を水増しする粉飾決算を疑ってきます。
1.実質的に返済可能か これを「簡易キャッシュフロー」といいます。この額が借入金返済額を上回っているかどうかで企業の返済能力を見ます。
2. 聞いた話ですので何ともいえませんが、中小企業の場合はこれにプラス役員報酬額も加えて判断する事もあるようです。
3. 決算書における損益計算書の項目から経常利益と減価償却費をプラスしたもの、これが返済財源とみなされます。
1.債務償還年数 これが一般的に10年以内であれば正常とみなされるようです。
2. 現在の借入総額から上記で揚げた「簡易キャッシュフロー」を除すると借入金を何年で返済できるのかが算定できます。これを債務償還年数と言います。
(2)格付け
金融機関は、企業から決算書を預かると上記のポイントを含む企業審査を行い、当該企業の格付け(債務者区分)を行います。これについては次項にて詳しく説明します。
(3)過去における返済実績や納税実績
すでに金融機関とお付き合いのあるところについては過去の返済実績も企業
審査における重要なポイントです。期日を一日でも遅れてしまうと、いくら業績が良くてもマイナス評価です。
企業が支払うべき税金も同様です。融資の際には必ずと言ってよいほど納税
証明を求められます。法人税等はもちろんの事、消費税や源泉所得税の滞納があると融資が受けられない可能性があります。