中小企業の金融基礎知識 連載第5回
2016年12月5日
融資を受けるための心得
(1)貸し手の気持ちになる
前述で、日本政策金融公庫の新規開業資金の紹介をいたしました。そこで融資を受ける為の要件を以下の様にあげました。
・勤務実績
・自己資金(今は特に求められませんが)
・創業計画書
後、1項で公庫の紹介の際に、公共料金の件も思い出してください。
これにはそれぞれ理由があります。
もし、あなたが他人に資金を貸す場合、どのような事を考えますか?当然、貸すのですから返してもらうことが前提となるはずです。
大抵、知り合いに貸すケースの方が多いでしょうから、その方の性格や、経済力をある程度知っており、それを加味した上で実行に移す事と思われます。
しかし、金融機関は新規の場合、借り手と会うのが初めてで、どんな人かもわからないのに融資をするのですから、キチンと返してもらえるのかという綿密な審査をいたします。
上記で挙げた公庫で必要な要件で勤務実績は何を指すのか、これはその方の事業におけるスキルを指します。勤務実績がない、もしくは少ない場合、その業種に対しての知識は当然ながらない、もしくは足りないと判断されます。
自己資金は何を指すのか、これは、どうも事業者のやる気を指すようです。自己資金0で他人からの資金で事業を行うのと、自己犠牲をある程度した上で事業を行うのでは、力の入れ具合が違うという判断があるようです。(自己資金を用意したほうがその後の返済も楽になるという事もあります)
そして、一番大切なのが創業計画書だと思います。これは、事業を始める方の情熱そのものだからです。もちろん、形式に従って記載すれば良いのですが、貸す側は、この人が融資した資金をどのように使い、その事業をどのように発展させていくのか、ここに一番興味があるからです。
あなたも他人に貸す場合、何に使ってどのように返してくれるのか、借り手に聞きますよね?聞かないことがあっても一番興味があるはずです。
創業計画書に、貸し手が融資をしたくなるような事を記載すること、これが融資を受けるための最重要項目だと思います。(当然ですが嘘はダメです。)
大袈裟かもしれませんが、是非とも創業計画書は自分の将来のビジョンを描くぐらいの気持ちで記載して下さい。記載の仕方が分からなければ、当社に問合わせてくれればいくらでも相談に乗ります。
計画書ですが、これについては後でも述べますが、新規開業資金時だけでなく、その後も常に策定をされた方が良いと思います。
後は、公共料金の滞納ですが、これについては前述のとおり、その人の持つ特性(期限にルーズな人かどうか)を判断する材料だと聞きました。
要するに、貸す側がこの人に融資をしてもキチンと返済してくれるのだろうかという当然な気持ちもそうですが、この人に融資することによってどれだけ発展してくれるのだろうかという気持ちにさせる事が実は借りる側の心得なのだと思います。
(2)融資を受けるのは目的達成のための手段である
そんなこと当然だ、と感じる方が多数だと思います。しかし、準備もせずに資金繰りが窮境状態に陥ってしまうと、あちこち資金調達に駈けずり周り疲労困憊し、融資実行が目的にすり替わってしまう事が実際にあります。
融資を受けるのは、あくまでも目的達成のための手段です。
その心得は、前述の新規開業資金同様、何のために(資金使途)いくら必要か(融資額)
くらいは最低限でも把握していなければなりません。
事業資金がショートしてしまう場合でも、いつ資金が足りなくなるのかは事前に把握をした上で一日でも早く動く事と、なぜ足りなくなったのかという原因分析をする事で、これ以上ショートをさせないようにするという事を心がけなければなりません。
そして、借りた資金は返す。当然の事ですが、これを念頭に置くことは一番重要なことなのです。