〈いわゆる「分譲マンション」の相続税評価が変わりました〉
2024年5月8日
令和6年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した「居住用の区分所有財産」(いわゆる分譲マンション)の価額は、新たに定められた個別通達※により評価します。
※令和5年9月28日付課評2-74ほか1課共同「居住用の区分所有財産の評価について」(法令解釈通達)
相続税におけるマンションの評価方法についての見直しの動きについては当ページ2023年9月4日掲載の記事にて紹介していますが、相続税評価額が最低でも市場価格の60%になるよう評価額を補正することになります。より評価方法が複雑になりますので、当社スタッフまで気軽にご相談ください、
Ⅰ「居住用の区分所有財産」の評価方法の概要
1.概要
居住用の区分所有財産(一室の区分所有権等)(注1)の価額は、次の算式のとおり評価します。ただし、下記2に掲げるものについては、この個別通達の適用はありません。
(注1)「居住用の区分所有財産(一室の区分所有権等)」とは、一棟の区分所有建物(区分所有者が存する家屋で、居住用に供する専有部分(注2)のあるものをいいます。以下同じです。)に存する居住用の用に供する専有部分(注2)一室に係る区分所有権(家屋部分)及び敷地利用権(土地部分)をいいます。以下同じです。
(注2)「居住の用に供する専有部分」とは、一室の専有部分について、構造上、主として居住の用途に供することができるものをいい、原則として、登記簿上の種類に「居宅」を含むものがこれに該当します。以下同じです。
【算式(自用の場合)】
価額 = 区分所有権の価額(①) + 敷地利用権の価額(②)
- 従来の区分所有権の価額※ × 区分所有補正率(後述Ⅱ3参照)
※家屋の固定資産評価額×1.0
②従来の敷地利用権の価額※ × 区分所有補正率(後述Ⅱ3参照)
※路線価を基とした1㎡当たりの価額×地積×敷地権の割合(共有持分の割合)
(固定資産税評価額×評価倍率)
なお、居住用の区分所有財産が貸家及び貸家建付地である場合その貸家及び貸家建付地の評価並びに小規模宅地等の特例の適用については、この個別通達の適用後の価額(上記①及び②の価額)を基に行うこととなります。
2.この個別通達の適用がないもの
・構造上、主として居住の用途に供することができるもの以外のもの(事業用のテナント物件など)
・区分建物の登記がされていないもの(一棟所有の賃貸マンションなど)
・地階(登記簿上「地下」と記載されているものをいいます。以下同じです。)を除く総階数が2以下のもの(総階数2以下の低層の集合住宅など)
・一棟の区分所有建物に存する居住の用に供する専有部分一室の数が3以下であって、その全てを区分所有者又はその親族の居住の用に供するもの(いわゆる二世帯住宅など)
・たな卸商品等に該当するもの
(注)借地権付分譲マンションの敷地の用に供されている「貸宅地(底地)」の評価をする場合などにも、この個別通達の適用はありません。
Ⅱ「区分所有補正率」の計算方法
区分所有補正率は「1.評価乖離率」、「2.評価水準」、「3.区分所有補正率」の順に、以下のとおり計算します。
- 評価乖離率
評価乖離率 = A + B + C + D + 3.220
A・・・一棟の区分所有建物の築年数※ × △0.033
※建築の時から課税時期までの期間(1年未満の端数は1年)
B・・・一棟の区分所有建物の総階数指数※ × 0.239(小数点以下第4位切捨て)
※総階数(地階を含みません。)を33で除した値(小数点以下第4位切捨て、1を超える場合は1)
C・・・一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階※ × 0.018
- 専有部分がその一棟の区分所有建物の複数階にまたがる場合(いわゆるメゾネットタイプの場合)には、階数が低い方の階
なお、専有部分の所在階が地階である場合には、零階とし、Cの値は零
D・・・一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度 × △1.195(小数点以下第4位切上げ)
敷地持分狭小度(小数点以下第4位切上げ)=敷地利用権の面積※÷専有部分の面積(床面積)
※敷地利用権の面積は、次の区分に応じた面積(小数点以下第3位切上げ)
①一棟の区分所有建物に係る敷地利用権が敷地権である場合
一棟の区分所有建物の敷地の面積×敷地権の割合
②上記①以外の場合
一棟の区分所有建物の敷地の面積×敷地の共有持分の割合
(注)評価乖離率が零又は負数の場合には、区分所有権及び敷地利用権の価額は評価しない(評価額を零とする。)こととしています(敷地利用権については、下記3(注)の場合を除きます。)。
- 評価水準
評価水準(評価乖離率の逆数) = 1 ÷ 評価乖離率
- 区分所有補正率区分
区分 | 区分所有補正率 |
評価水準 < 0.6 | 評価乖離率 × 0.6 |
0.6 ≦ 評価水準 ≦ 1 | 補正なし(従来の評価額で評価) |
1 < 評価水準 | 評価乖離率 |
(注)区分所有者が一棟の区分所有建物に存する全ての専有部分及び一棟の区分所有建物の敷地のいずれも単独で所有している場合には、敷地利用権に係る区分所有補正率は1を下限とします(区分所有権に係る区分所有補正率には下限はありません。)。
〇区分所有補正率は、国税庁ホームーページに掲載している「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」により簡便に計算することができます。