逓増定期保険を利用した節税について
2018年8月3日
先日新聞記事やヤフーニュースで全額損金になる逓増定期保険を利用した節税が横行しており、もうすぐ国の規制が入るのではないかという記事が取り上げられていました。実際、大手保険会社が相次ぎ逓増定期保険の新商品を売り出し、かなりの売れ行きだそうです。現状、逓増定期保険に加入し、正しく税務処理をした場合に全額損金となったときは、もちろんその行為は脱税ではなく、節税として認められます。
ここで、逓増定期保険について解説しますと、『保険期間の経過により保険金額が5倍までの範囲で増加する定期保険のうち、その保険期間満了の時における被保険者の年齢が45歳を超えるもの』という定義付けされており、税務処理では保険期間満了の時における被保険者の年齢が45歳を超えるものは保険内容によって1/2損金算入、1/3損金算入、1/4損金算入のいずれかに該当することになります。そのため、保険期間満了時の被保険者が45歳以下であれば全額損金算入となるというカラクリです。
実は、平成20年にも同様の節税が横行したため、この保険期間満了時の年齢が60歳から45歳に引き下げられた経緯があります。ですので、今後、国の規制が入るとすれば、被保険者がかなり若くないと全額損金算入とならない可能性があります。平成20年の改正の際には、それ以前に加入していた保険契約については、その後も改正前と同様の処理が認められましたので、今回も規制される前に加入するという会社も多くなるのではないでしょうか。
このような節税保険を利用する場合は次の点に注意してください。
①解約返戻金のピークまで数年間のあいだ保険料を払い続けなければいけませんので、単年度でたまたま調子が良かったからといって保険料を高めに設定しすぎると、その後の年度に無理が生じる可能性があります。
②解約返戻金のピークで解約すると、解約返戻金が法人の益金になります。解約年度で役員の退職金など何らかの損失要因がなければ、せっかくの保険料での節税が無駄になります。
やみくもに節税になるから利用するのではなく、中長期の利益計画・資金計画をした上での利用が重要です。
もし、セーフティー共済の利用がまだでしたら、このような節税保険と同様の効果が見込めますので、ぜひおすすめです。節税保険と異なり、掛金も毎年変更できますし、解約返戻金のピークを意識せず、必要なときまで取り崩さずにストックできます。月額20万円という縛りや最大800万円が上限ですので限界はありますが、併せてご検討ください。